全三巻 氷と炎の歌3 早川書房
少年王ジョフリーの元に老獪な王の手、タイウィン・ラニスターが戻った。レンリー王は死にスタンニス王は船団をなくし、北の王はリヴァーランに留まっている。七王国の鉄の玉座キングズランディングはひとときの平穏と王の婚礼に沸く。
しかし王国の北「壁」のむこうからは野生人、さらに青白い亡者たちがせまっていた。
――このさきネタバレなしでは書けません。
――お気をつけくださいね。
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野生人と共に壁にむかうジョン、出撃した夜警団の中のサム、
無法者に捕らえられたアリア、キングズランディングにむかうタースのブリエンヌとクイーンの双子の兄ジェイム。
壁の北へとむかっているブラン。
前半はこれらの旅のようすが歩く速さのようにじっくりと進みます。どの旅も汚くて臭くてぬれていて寒くて空腹で、危険なのです。そしてまわりの状況は悲惨で。
旅をしていなくても、キングズランディングにいるティリオンは半死半生だし、リヴァーランのレディ・ケイトリンは父の死の床にいて、弟や息子とはなんとなく気まずい。ティレル家に接近するサンサはとても危ういですし。
それでも前半は平穏に進んでいくのですが、後半になると物語はいっきに動きます。
鉄諸島の王が橋から落ちて死んだという知らせにはじまり、王たちにつぎつぎと死が訪れます。
北の王ロブは、精一杯王らしくあろうとしながら、その誠実さのために身を滅ぼしたように思えました。その母ケイトリンは危惧を感じていてもどうすることもできず、罠にはまってしまいます。
北の王スターク家は壊滅し、ラニスターの世がくるのかと思ったところでジョフリー王が毒殺され、疑いをかけられたティリオンにまたしても危機が訪れます。
傲慢で手に負えないジョフリーが殺されたときには溜飲がさがる思いがしたけれど、その黒幕はあの人。しばらくしずかにしていると思ったらこういうことだったのかと。いちばん信用できないのはやはりこの人かと思うとジョフリーの死も後味がわるい。
ティリオンの妻になっていたサンサは毒殺さわぎのあいだにキングズランディングをぬけだし、リトルフィンガーことピーター・ベーリッシュの手引きで叔母リサの元へ。ピーターは「キャットだけを愛してきた」というけれど、あのときケイトリンをたすけてくれなかったじゃない!と苦々しく思う。
だれもが誰かを利用しようとしている。
そんな息苦しさの中にも、あらたに語り手に加わったジェイム・ラニスター。王殺し(キングスレイヤー)と呼ばれ双子の妹のサーセイとともに思うままにふるまっている彼の、胸のうちが語られたときには心が動かされました。そして彼らとティリオンの父タイウィンのことを語る叔父の言葉にも。
誠実であろうとする者が策略におとされ、そうでない者が残っていく。どこまでも過酷な中にあってそれでも誠実であろうとする姿には心ひかれます。ダヴォスとかサムとか。サムにはほんとうに。この人には死んでほしくないと願ってしまいます。
スタンニス王はいままでいい印象がなかったのですが、ダヴォスの進言により、夜警団(ナイツウォッチ)の要請に応えてくれます。赤い女を盲目的に信じているわけでもなく、そんなに悪い人でもないかもと思わせます。
スタンニスがジョンに、ウインターフェルの領主になれというところが今回いちばんの誘惑ではないかと。ジョンがイグリッテと共にいたいと思うことよりももっと。
迷うジョンを救ってくれたのは大狼のゴーストで、さらにサムの勇気がうれしい結末をもたらします。他がとことん過酷なので、この決定はできすぎてる感じもちらりとするのですが、それでもいいです。
そして思いがけないエピローグ。
どうなるんでしょうこの先。あまりまたずに読めることを願うのですが。忘れてしまわないようここに書いておきます。
ジャケン・フガーのコインのおかげで無事に船に乗れたアリアはどうなったのか、ハウンドはほんとうにのたれ死にしてしまったのか、サンサはピーターにいいように使われてしまうのか、デーナリスは果たしてウィスタロスまで来られるのか。
ジェンドリーとホットパイのことも気になるし、ツインズの領主をこのままにしておいていいのか!と思うし、サーセイはキャスタリーロックの領主になるのか、そういえばシオン・グレイジョイはどうなったんだ。などなど気になることだらけです。
最後に、いちばんわくわくしたのはやはり壁を守るジョンたちですね。
「ジョン、おれが戻るまで、”壁"はおまえのものだ」(3/130ペ-ジ)
ジョンはかれらにいった。「もし、マンスがまた何か始めたら、呼んでくれ。ピップ、”壁”はおまえのものだ」
「おれの?」ピップはいった。
「こいつの?」グレンがいった。
(3/212ページ)
読んできてよかったと。