乱鴉の饗宴/ジョージ・R・R・マーティン

氷と炎の歌4 乱鴉の饗宴 上下 ジョージ・R・R・マーティン 早川書房

王の手タイウィンが殺され、サーセイ太后の専横がはじまる。


訳者が替わり人名、地名、その他の呼び名が大幅に変更になった第四部です。読み進むのに時間がかかりました。この人だれ? もとはなんていったっけ?と、とにかくいちいち気になってしまうのです。
前半はこれといって大きな事件がなく、第三部のその後の話がじっくり進みます。そのせいもあって、読むのに弾みがつかなかったのかもしれません。

サーセイ、ドーンのプリンセス、鉄諸島のアシャ。権力を望んでも女性ゆえに阻まれる話が多いようでした。
サーセイは人を信じることをせず、軽蔑している者たちでまわりをかため、その者たちを思い通りに動かせると傲慢になっている。それが父のようにある自分の姿だと錯覚して、本当に力になってくれるはずの人たちを遠ざけてしまう。あまりにおろかで見ていられない気がしました。

気になっていたハウンドのこともわかり、あたらしい策略もいくつか見えてきて、どうなるんだろう・・・というところでおわり。次巻は今回語られなかった壁やドラゴン、ティリオンの話だそうなので、このつづきはさらに先・・・。また忘れないように書いておきます。
つい力をいれて読んでしまったブライエニー、だれかに思い入れると、あっけなく死んでしまったりするので危ないです。この話、容赦がないですから。〈石の心〉と対面。最後になにを叫んだのか、ハントはポドリックはどうなるのか。
目が見えなくなったアリアは?
〈知識の城〉にたどりついたサム。ドラゴンを手にいれようとする〈鴉の眼〉はどうなるのか。
「わが子」トメン王の将来を考えてたりするジェイミーにそんな未来は来るのか。
野に放たれた〈漆黒の魚〉と吊しまくっている〈石の心〉もいて。
ドーンのプリンスの仕掛けと、リトルフィンガーが計算高く巡らせている策略もあり、このさきも波乱がつづきそうです。

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チェンジリング・シー/パトリシア・A・マキリップ

小学館ルルル文庫

海に帰りたいのに帰れない王子キール。
ほんとうは陸のものなのに、海につなぎとめられている海竜。
そして、海に「呪い」を投げつけようとするペリ。

海藻の枝でつくった呪い。もつれた髪。
海竜の黄金の鎖。海に立つ二本の石柱。
まばゆい月光。真珠で重くなった髪。
ちりばめられた光。

そういうイメージを読むのが好きなのだ。
としかいいようがない気がしてきました。
マキリップだあ・・・と幸せになりつつ、ゆっくり読みました。

ペリには魔法を呼びよせる不思議な力があるということだったけれど
海辺の家からいなくなったおばあさんも、海から黒真珠を受けとったのかもしれない。そう思うとペリの魔法はだれにでも起こりえることかもしれないと思えて・・・

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スカイブレイカー/ケネス・オッペル

20世紀初頭のパリ。なのだけど飛行機ではなく飛行船が発達した世界。
飛行船アカデミーに通うマットは、富豪の娘ケイト、野心家の青年実業家ハル、そして謎の美少女ナディラとともに、財宝をつんだゆうれい飛行船を探し飛び立つ。
はらはらどきどきのちょっとなつかしい舞台立てのお話。おもしろかったです。なんといっても高度3000メートルの空にいる「イカ」が最高。それも電気イカ。

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剣嵐の大地/ジョージ・R・R・マーティン

全三巻 氷と炎の歌3 早川書房

少年王ジョフリーの元に老獪な王の手、タイウィン・ラニスターが戻った。レンリー王は死にスタンニス王は船団をなくし、北の王はリヴァーランに留まっている。七王国の鉄の玉座キングズランディングはひとときの平穏と王の婚礼に沸く。
しかし王国の北「壁」のむこうからは野生人、さらに青白い亡者たちがせまっていた。

――このさきネタバレなしでは書けません。
――お気をつけくださいね。

――
――


――
――


野生人と共に壁にむかうジョン、出撃した夜警団の中のサム、
無法者に捕らえられたアリア、キングズランディングにむかうタースのブリエンヌとクイーンの双子の兄ジェイム。
壁の北へとむかっているブラン。
前半はこれらの旅のようすが歩く速さのようにじっくりと進みます。どの旅も汚くて臭くてぬれていて寒くて空腹で、危険なのです。そしてまわりの状況は悲惨で。
旅をしていなくても、キングズランディングにいるティリオンは半死半生だし、リヴァーランのレディ・ケイトリンは父の死の床にいて、弟や息子とはなんとなく気まずい。ティレル家に接近するサンサはとても危ういですし。

それでも前半は平穏に進んでいくのですが、後半になると物語はいっきに動きます。
鉄諸島の王が橋から落ちて死んだという知らせにはじまり、王たちにつぎつぎと死が訪れます。
北の王ロブは、精一杯王らしくあろうとしながら、その誠実さのために身を滅ぼしたように思えました。その母ケイトリンは危惧を感じていてもどうすることもできず、罠にはまってしまいます。
北の王スターク家は壊滅し、ラニスターの世がくるのかと思ったところでジョフリー王が毒殺され、疑いをかけられたティリオンにまたしても危機が訪れます。
傲慢で手に負えないジョフリーが殺されたときには溜飲がさがる思いがしたけれど、その黒幕はあの人。しばらくしずかにしていると思ったらこういうことだったのかと。いちばん信用できないのはやはりこの人かと思うとジョフリーの死も後味がわるい。
ティリオンの妻になっていたサンサは毒殺さわぎのあいだにキングズランディングをぬけだし、リトルフィンガーことピーター・ベーリッシュの手引きで叔母リサの元へ。ピーターは「キャットだけを愛してきた」というけれど、あのときケイトリンをたすけてくれなかったじゃない!と苦々しく思う。

だれもが誰かを利用しようとしている。
そんな息苦しさの中にも、あらたに語り手に加わったジェイム・ラニスター。王殺し(キングスレイヤー)と呼ばれ双子の妹のサーセイとともに思うままにふるまっている彼の、胸のうちが語られたときには心が動かされました。そして彼らとティリオンの父タイウィンのことを語る叔父の言葉にも。

誠実であろうとする者が策略におとされ、そうでない者が残っていく。どこまでも過酷な中にあってそれでも誠実であろうとする姿には心ひかれます。ダヴォスとかサムとか。サムにはほんとうに。この人には死んでほしくないと願ってしまいます。
スタンニス王はいままでいい印象がなかったのですが、ダヴォスの進言により、夜警団(ナイツウォッチ)の要請に応えてくれます。赤い女を盲目的に信じているわけでもなく、そんなに悪い人でもないかもと思わせます。
スタンニスがジョンに、ウインターフェルの領主になれというところが今回いちばんの誘惑ではないかと。ジョンがイグリッテと共にいたいと思うことよりももっと。
迷うジョンを救ってくれたのは大狼のゴーストで、さらにサムの勇気がうれしい結末をもたらします。他がとことん過酷なので、この決定はできすぎてる感じもちらりとするのですが、それでもいいです。
そして思いがけないエピローグ。

どうなるんでしょうこの先。あまりまたずに読めることを願うのですが。忘れてしまわないようここに書いておきます。
ジャケン・フガーのコインのおかげで無事に船に乗れたアリアはどうなったのか、ハウンドはほんとうにのたれ死にしてしまったのか、サンサはピーターにいいように使われてしまうのか、デーナリスは果たしてウィスタロスまで来られるのか。
ジェンドリーとホットパイのことも気になるし、ツインズの領主をこのままにしておいていいのか!と思うし、サーセイはキャスタリーロックの領主になるのか、そういえばシオン・グレイジョイはどうなったんだ。などなど気になることだらけです。

最後に、いちばんわくわくしたのはやはり壁を守るジョンたちですね。
「ジョン、おれが戻るまで、”壁"はおまえのものだ」(3/130ペ-ジ)

ジョンはかれらにいった。「もし、マンスがまた何か始めたら、呼んでくれ。ピップ、”壁”はおまえのものだ」
「おれの?」ピップはいった。
「こいつの?」グレンがいった。
(3/212ページ)

読んできてよかったと。

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聚楽―太閤の錬金窟(グロッタ)

関白、豊臣秀次の出自。

やられました。家康と一緒になって「あっ」と声を上げていました。そこで、そうつなげてくるか……と。
細心にして大胆、という感じでしょうか。
きらびやかでグロテスク。中程では繰り返される描写に多少疲れたものの、いくつものみずみずしい場面が心に残り、最後にはそれが切なく昇華されるのです。
歴史物というと主人公が最後に死んでしまうせいか寂寥を感じることが多いのですが、読後には深い満足感がありました。
それにしても、とても透明感のある信長様。「信長」読むのが楽しみです。
「○○○に、異端宣告(アナテマ)!」不意にやってくるこの言葉が気に入ってたり。

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黎明に叛くもの/宇月原晴明

圧巻。豪華絢爛。おもしろかったです。
斎藤道三が美濃をとろうとするあたりから、明智光秀の本能寺まで。松永久秀に焦点があてられています。
暁の星は日輪の露払い。日が昇れば消えていく運命。

結末はわかっているだけに、ここでこうなって、ああ、それでああなるのか、というのが読んでてとてもおもしろいです。
それで明智が・・・ああ、せつないなあと思いつつ読み進めると、最後の最後に気持ちの転換があり、ぱっと目の前が開ける感じがします。読後にはどこか突き抜けたような清々しささえ感じました。

明智光秀と帰蝶との再会や、久秀と兄弟子とが水に遊ぶ思い出あたりに心ひかれます。そして、傀儡(くぐつ)の果心が存外かわいいのです。

「安徳天皇漂海記」の雰囲気が好みだなと思い、続けて読んでみました。新刊から遡っているようなので、いっそこのまま次は「聚楽―太閤の錬金窟」にいこうかな。あと二冊あるのもうれしい。

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時の彼方の王冠/ダイアナ・ウィン・ジョーンズ

デイルマーク王国史4 創元推理文庫

南部から逃れてきたミットは、庇護されていた女伯爵から、友人の命をたてに、
〈唯一の者〉の娘で真の女王といわれているノリスの暗殺を命じられる。
いやいや旅立ったミットは、当のノリスに惹かれ、女王になるための旅に同行することになる。

一方、現代の娘メイウェンは不思議な青年ウェンドの手により
200年前の世界に飛ばされ、いなくなってしまったノリスのふりをすることになる。
だけど、ウェンドは知らんふりで状況はさっぱりわからず途方にくれる。
なにしろ、微笑みながら近づいてくる男の子〈ミット)の名前すら知らないのだ。

魔法のクィダーをもつ詩人の少年モリル。詩人の老人ヘステファン。
ミットと一緒に南部から逃げてきた元伯爵の息子で軍人のネイヴィス。そしてウェンド。
メイウェンは彼らとともに、真の王の指輪と剣と王冠をさがし旅をするが…。


ラスト近くでは主人公のひとりメイウェンにすっかり感情移入していました。

ミットがヒルディを選ばなくてよかった。
だけど、それがいったい、なんのなぐさめになるっていうの!

というような気分。せつないです。
だけど最後の最後にちゃんとどんでん返しがあるので大丈夫。

前の3つの物語がここに集まったという感じです。
前作の登場人物たちが登場し、それぞれの立場から、
デイルマークの統一の物語に織り込まれていく。
3の織り人タナクィもちゃんと登場。弟の魔法使いマラードも、兄さんのハーン王も。

ミット「あなたがた〈不死なる者〉は、ぼくのことをとことんまで追いつめるんだ」
ハーン「わたしのときも同じだった」

この場面に、つい、にやっとしました。きっともっとたくさんある。
読み返すときっと、新たな発見があると思う。
気になっていた、あの人もこの人も、どうなったのかわかり、
アミル王がデイルマークを統一し、物語はおわりになる。
終わってしまったんだなあって、ちょっと寂しく思う。
だけど、ほんとうは終わってない。そんな読後感です。

いいなと思うのは、土臭い感じがすること。
見たことのないデイルマークの風景がみえること。風や草の匂いがすること。
くさくて、べたべたで、お風呂には入れるならなんでもする!と叫ぶ旅が
とても魅力的なのでした。

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呪文の織り手/ダイアナ・ウィン・ジョーンズ

デイルマーク王国史3
土のにおいがします。
前2冊が中世なのにたいして、これは古代。
ケルトの時代を思わせます。
デイルマークの古代なのです。
下の娘、タナクィがローブを織ることで物語が進みます。
後半へ行くほど読むスピードが上がるのは、
ローブを織るのが早くなるからかもしれません。

異教徒との戦いに行った兄が心を病んで帰ってきた。
主人公兄弟たちは、異教徒に風貌が似ているため、
同じ民から迫害を受け、川を下る。
河口では邪悪な魔術師が呪いをかけ、兄弟の魂をねらう。

川を下り、またさかのぼり。話は一本道なのですが、
魔術師のローブを読むところや、魂が網にとらわれる
ところなど、印象的です。
機を織ることで物語をつむぐ話ですが、
物語が文字(記号のようなもの?)で織られていき、
本を読むように文字をたどって読み返すことができる
のがおもしろかった。

あの人が死んでしまうのが、かなしかったです。
タナミルが少しハウルっぽくて楽しい。
伝説のハーン王が生まれたときの物語なのでした。


4「時の彼方の王冠」を読み始めています。
2の主人公ミットが主人公! ミット好きだな。
少し読んだだけで、おもしろい予感がひしひしとするんです。
うれしくって、もったいない。
ミットはいきなり暗殺を命じられ、窮地なのですが、
語り口が楽しくて。ミットをにらんでる1主のモリルもおもしろい。
3から14年後に書かれたそうですが、
これこそダイアナ・ウィン・ジョーンズという感じで、うれしいです。

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聖なる島々へ/ダイアナ・ウィン・ジョーンズ

デイルマーク王国史2
「詩人たちの旅」の主人公の名前には意味があり、それが鍵でしたが、
この話の主人公の名前はもっともありふれたもので、それが鍵です。
わたしにはそうでした。アルの正体を知った時は衝撃。

圧政に苦しむミットは革命組織に身を投じ、領主に爆弾を投げる計画をたてる。
ところがその爆弾を蹴り上げたのが、領主の三男。逃げるうちにミットは、
三男の娘ヒルディと弟イネンのヨットに紛れ込む。
銃で脅して北部へ行けというミット。
ところが漂流者のアルを拾い、船はいつしか聖なる島々へ。

「詩人たちの旅」と同じで、さあこれからという感じのところで終わりになってしまう。
話はたしかに終わってるんだけど。ミットやヒルディのその後が気になるのです。

主人公はレジスタンスなわけですが、深刻さがあまりありません。
それはミットの母のせいですが、理想の家族とは程遠く、
父も母もとんでもないのです。

読みどころはヨットでの航海だと思う。
アーサー・ランサム好きの私は「ブーム」とか「間切る」とか読んだだけで
うれしくなってしまうのでした。
ミットが逃げる場面の躍動感も楽しめます。聖なる島々の雰囲気もいいですし。
1と同じように最後に大技の魔法が用意されています。

「アメット燃やせ!(ちくしょう!)」
が、私の今の合言葉!

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詩人たちの旅/ダイアナ・ウィン・ジョーンズ

デイルマーク王国史1 四部作の一冊目です。 
吟遊詩人クレネン一家の末っ子モリルが、伝説の詩人(うたびと)オスファメロンが
作った弦楽器クィダーをうけつぐ話。

デイルマークは南北に分かれていて、北部は自由だが、
南部では圧政が敷かれている。
一家がキアランという少年を馬車に乗せてから、運命が変わる。
父は殺され、母は去り、兄はとらわれる。
モリルはクィダーに秘められた魔法を見い出して。
と書くと、だいたい終わってしまう。

物語が進んで、さあ、これから!という感じのところで
終わってしまう気がします。たしかに終わりなんだけど。
筋じゃなくて、細部に読み応えがあります。
馬車の旅や、キアランとの確執と友情や、思いがけない母の一面や。
父がいなくなってからの、演奏のこととか。
かなり過酷なのに、重苦しくないところがこの作者らしいようです。
最後のクィダーの生み出す魔法は圧巻。

4巻でまた彼らは活躍するらしいので、楽しみにしてます。
キアランの刑死させられた兄が、なんとなく気になるわたし。

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影のオンブリア/パトリシア・A・マキリップ

ハヤカワ文庫

マキリップなんですよ。いったい何年ぶりの邦訳でしょう。この日をどんなに待ち望んだことか。
「妖女サイベルの呼び声」「イルスの竪琴」三部作などの作品が邦訳されています。「妖女サイベルの呼び声」は、岡野玲子さんが「コーリング」という題で漫画化。原作の雰囲気そのままのすてきな本です。


世界で最も美しく古いといわれる都オンブリア。
その地下には、いく層にも重なった、影のオンブリアがある。
それはオンブリアが生まれてからずっと降り積もった歴史と魔法の世界。

大公の愛妾リディアは、大公の死に際し、老女〈黒真珠〉によって、宮廷を追い出された。
いつから生きているとも知れないかび臭さを漂わせる〈黒真珠〉は、大公の遺児である幼い少年の摂政となり、宮廷を掌握する。幼い少年の身を案じているのはリディアと、大公の妹の庶子デュコンだけ。
宮廷の不穏分子たちはデュコンに起てと迫るが、デュコンは木炭を手にオンブリアをさまよい、絵を描き続ける。

影の世界に住む魔女フェイ。その手伝いをしている〈蝋人形〉の少女マグは、リディアを助け、デュコンもまた助けるに足る人物なのかを探る。


独特の空気やたたずまいや匂いを感じられる。
宮廷の秘密の通路や、マグの出入りする不思議な扉。
過去のものから姿を借り、次々と変えていく魔女フェイ。
ゆうれいと語ることにすべてをささげる学者。
色の薄い髪の不思議な人物。

最後には大団円があってほっと本を閉じるのだけど、心はいまだにオンブリアをさまようのでした。

私が好きなのは影のオンブリアの扇。それとリディアが髪に編みこんだ宝石と、マグが編みこんでいるピン、だったりします。

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犬は勘定に入れません/コニー・ウィリス

「犬は勘定に入れません あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎」が正式。
タイムトラベルSFユーモアミステリーです。
盛りだくさんだけど、ほんとうにタイムトラベルSFユーモアミステリー。
くすくすと笑えるところが随所に。おもしろかったです。

コヴェントリーに主教の鳥株。
そして、アガサ・クリスティー 犯人は執事。
「鳥株」っていったい何?と検索までしてしまいました。
鳥株は気になるものの、おもしろいのでどんどん読み進めます。

「神は細部に宿る」
空襲で燃えてしまったコヴェントリー大聖堂を寸分たがわず復元する
という使命に燃えるレディ・シュラプネルの命令で、
主人公で、オックスフォードの史学生ネッドは、
大聖堂に飾られていた「主教の鳥株」を求めて時間を行ったり来たりする。
挙句に時代差ぼけ(タイムラグ)で疲労困憊。安静を求め、
レディ・シュラプネルの手から逃れるためにヴィクトリア朝へと逃げ込んだ。
そのときに、教授から重要なことを頼まれたのだが、タイムラグのせいで
それが思い出せない。
それはやがて世界存亡の危機にまで発展して――。

前半は主人公と一緒に、読んでるこっちまでタイムラグ状態。
なにをどうしたらいいのか、さっぱりわかりません。
そこでヴィクトリア朝のオックスフォードの学生、テレンスと出会い、
テムズ川をボートで旅することに。
後半の謎解きやクライマックスより、わけがわからないままの川旅が楽しかった。
200年前でも、オックスフォードの学生といえばすぐに気心が知れてしまったり、
名物教授の話ができたり。連綿と続く歴史があるんだなあと思いました。
ああ、そうだ。恋愛小説でもありました。
猫好き、犬好きのお話でもあります。

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王狼たちの戦旗(上・下)/ジョージ・R・R・マーティン

氷と炎の歌2 早川書房
お休みの間ずっと読んでいました。ああ、読んだー。しあわせだった。

王妃の陰謀で王は死に、七王国の「鉄の玉座」に王妃の子ジョフリーが着いた。それを認めない王の二人の弟たちは、それぞれに王を名乗って反旗を翻す。そして、陰謀に巻き込まれて父を殺されたウィンターフェルの領主の息子ロブも北の王の名乗りを上げる。
領主たちはそれぞれの思惑で、それぞれの陣営に忠誠を誓い、七王国に戦火が広がる。

解説にもあるけれど、さながら戦国時代。歴史物みたいです。けれど結末を知らない分、緊張感でいっぱいです。
陰謀と陰謀が重なり合い、裏切りのうえの裏切り。まわりは誰も信用できず、兄弟はなおさら。そして信じられる友情はまるで無力なのだ。敵に庇護されていることが一番安全だという皮肉。
二転三転する様相にほっとする暇もなく、ならばこうか、と思うとさらにひっくり返される。緊張の連続です。

戦記だけれど、王たちは決して主人公ではない。視点はいつも下の位置にある。物語のうねりに翻弄される人たちばかり。
ウィンターフェル領主の妻レディ・ケイトリン、その娘で新王の婚約者という名の人質サンサ、その妹の流浪のアリア、その弟でけなげにウィンターフェルの城主の跡継ぎの役目をこなす8歳のブラン。
多視点で語られるので、こんがらがる事もあるし、語り手がかわってすぐは状況が読み取りにくい。
「えええっ?!」というところで視点が変わってしまうので、目の前のストーリーを追っているとつらい。でもこれが全体の厚みを増しているのだと思う。
細部にわたる描写といい、とにかくすごいです。

この人は死なないだろうと思っているといきなり死んでしまうので要注意、というのは前巻で学んだつもりだったのに、途中でやられた。
でもそのあと意味深な記述が続き、頭を悩ませていると、最後には霧が晴れてくる。そうだったのか、シオン・グレイジョイ!

登場人物が多くて、巻末の人物表を見てもよくわからないのですが、それもあまり苦にならなく、引き込まれてしまいます。
これだけいるのに、どの人物も魅力的。前巻では鼻持ちならない娘だったサンサが、けなげに成長していてほっとする。アリアはいっぱいいっぱいで生きてる。
夫を亡くし、父は病床で娘のこともわからない状態、長男ロブはたった15なのに王となり、自分の手を離れる。誰かに支えてもらいたいと願いながら、義務を果たさなければと立ち、なのに無力を思い知らされるケイトリンが、つらい。
ジョン・スノウとナイツウオッチの面々もいい。
裏切り者のシオンでさえ、彼の立場を思うと気の毒にすらなる。
諸悪の根源みたいな王妃も、サンサへの言葉に真実が見えたり。
ハウンドがサンサの歌を聞きにきた場面ではどきどきした。
でもいちばんはインプこと「王の手」ティリオン・ラニスター。姿は醜く嫌われていて、策を弄し、信用できず危なく、ケイトリンやサンサの敵であるのに、彼がいちばん誠実なのではないかとさえ思う。

前巻よりファンタジー部分が多い。ケイトリンが見たスタンニスの影や、アリアのであったジャケン・フガー。壁の北に繰り広げられる、よみがえる死者。錬金術師の燐火。デーナリスのドラゴン。ブランと大狼。きらびやかに織りなしている感じ。

まだまだ、物語は終わりそうにありません。待つのがつらいです。解説によると4巻はまだ本国でも出ていないとか。つらすぎる。でも待つだけの価値のある本です。

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サラマンダー —無限の書—/トマス・ウォートン

早川書房。
始まりも終りもない本を作ろうとしている印刷工とその娘パイカの物語。
歯車で動き続ける奇怪な城と伯爵。
活版印刷の重々しい様子。
ベニスからアフリカ、オーストラリア、シナそしてロンドンへと続く不思議な旅。
その時々で語られる、奇妙な物語。
文章は謎に満ちていて疑問だらけなのに、不思議と惹きつけられ読み進んでしまう。

無限の本とはどんなものか。いろんな形が示されていておもしろかった。

活字がひっくりかえり流れていくさまが美しいと思った。
ラスト、たった一個の小さな活字に感動しました。

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魔法使いハウルと火の悪魔/ダイアナ・ウィン・ジョーンズ

徳間書店刊。再々読です。荒地の魔女に90歳(自称)の老婆に変えられてしまったソフィーは、悪名高い魔法使いハウルの空中の城に乗り込んで・・・。
90歳って、ハウルの先生に対抗して、先生の年より多めに言った年齢だったんだ。
緑のねばねばとか、かかしとか(西洋では怖いものの象徴なんでしょうか?)王様とか。とにかく楽しいです。よく考えるとソフィーの境遇は深刻なのに、とにかく楽しいのです。
いつものように途中からごちゃごちゃになり、ごちゃごちゃのまま終わる! 
読み返してみて、ソフィーが老婆になって、いかに自由になったかがよくわかりました。18歳ではできないことが90歳ならできる。とても解放された気持ち。
好きな場面は星を追いかけるところ。マイケルがいいんです。
映画は見ていません。きっとおもしろいと思うんだけど、大好きな話だからやっぱり不安も。見に行きたいんだけど。マイケルがマルクルだし。

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星空から来た犬/ダイアナ・ウィン・ジョーンズ

早川書房・ハリネズミの本箱。
いろんな出版社から出るようになって、追いかけきれなくなってきました。
ジブリのおかげでたくさん読めるようになったのは、とてもうれしいことです。まだまだたくさんあるんだろうな。
これは初期の作品(30年前)とのこと。やっぱりウィン・ジョーンズらしい楽しい話です。
星人シリウスが無実の罪を着せられ、犬にされて地球に放逐されるという話。拾ってくれたキャスリーン、バジルとロビンの兄弟たちを取り巻くゴタゴタが楽しい。
ソル(太陽)が好きだな。ちょっとハウルのマイケルっぽい。とすると地球はカルシファー? 狩の場面が素晴らしいです。最後はとても切なくて。

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